◆ボード砦の女戦士
ボード砦でヴァレリア解放戦線の指導者・セリエと
会談。ロンウェー公爵の暗殺という思いがけない企み
を耳にする。暗殺をめぐり、カチュアとの間で口論が
始まり、それがもとで会談は中止した。
弓をかまえた男
「とまれッ!
弓をかまえた男
「おまえたちは解放軍に追われている
神竜騎士団だな?
デニム
「いかにも、そのとおりだ。
僕の名はデニムッ。
弓をかまえた男
「我々はヴァレリア解放戦線の戦士だ。
おまえたちと戦うつもりはない。
「我々のリーダーであるセリエ同志が
おまえたちに会いたがっている。
一緒に来てもらおう。
カチュア
「…どうする、デニム?
デニム
「危害を加えるつもりはなさそうだ。
とりあえずいってみよう。
炎のセリエ
「私の名はセリエ。
ヴァレリア解放戦線のリーダーだ。
「おまえたちのことは知っている。
バルマムッサの一件を押しつけられた
ゴリアテの英雄殿であろう?
デニム
「…僕らに用事があるなら
言ってくれないか?
炎のセリエ
「では単刀直入に言わせてもらおう。
我々と取引をしないか?
カチュア
「取引ですって?
炎のセリエ
「そうだ。我々に手を貸せ。代わりに
おまえの汚名を晴らしてやろう。
デニム
「…どうやって?
炎のセリエ
「我々は今、ある計画を進めている。
おまえたちにとっても興味深い計画だ。
カチュア
「計画? 一般市民を巻き込む
恐ろしいテロならごめんだわ。
ヴァレリア解放戦線戦士
「我々はテロリストではないッ!
平和を愛する革命家だッ!
炎のセリエ
「…計画とは、おまえたちに賞金をかけた
ロンウェー公爵の暗殺だ。
カチュア
「公爵一人を暗殺したところで
この戦いが終わるわけではないわ。
「それどころか暗黒騎士団とバクラム軍は
舵を失ったウォルスタ軍に対して
必ず全面戦争をしかけるに違いない。
炎のセリエ
「それが狙いだ。…枢機卿が率いる
ガルガスタンはもう時間の問題だ。
「ガルガスタンを撃ち破った解放軍は
ヴァレリア島の半分を制する
強大な勢力となることだろう。
「そうなると、バクラムとウォルスタの
軍事力は五分と五分。戦えば、
共倒れになるに違いない。
「狡猾な司祭と公爵はその事態を
避けるために手を結ぼうとするだろう。
それでは何も変わらぬ。
「だが、公爵を暗殺すれば、
ここぞとばかりにバクラム軍は侵攻を
始めるだろう。
「そして、司祭がこの島の覇権を握った
その時、今度は司祭を暗殺するのだ。
カチュア
「そんなにうまくいくかしら?
炎のセリエ
「おまえたちにとっても悪い話では
ないだろうが?
炎のセリエ
「どうだろうか、おまえたちも
この計画に参加しないか?
「賞金首となって逃げ回るより、
我々と共に公爵を、暗黒騎士団を倒し
真の平和を築こうではないか。
カチュア
「戦争で苦しむのは私たちじゃないわ。
普通の生活を営む人々なのよ。
「何の罪のない幼い子どもたちが
死んでいく姿を私は見たくないッ!
炎のセリエ
「何事だッ、さわがしいぞッ!
ヴァレリア解放戦線戦士
「た、たった今、知らせが入りましたッ。
はぁ、はぁ…。
炎のセリエ
「あわてずともよい。
ゆっくり落ち着いて話せ。
ヴァレリア解放戦線戦士
「解放軍がガルガスタン軍を撃ち破り、
コリタニ城が陥落いたしましたッ!!
カチュア
「なんですって!!
ヴァレリア解放戦線戦士
「また、バルバトス枢機卿は捕らえられ、
今朝、夜明けと共に処刑されましたッ!
炎のセリエ
「わかった。では、計画を実行する。
皆の者に準備をさせよ。
ヴァレリア解放戦線戦士
「ハッ、かしこまりました。
炎のセリエ
「それから、使いの者にはゆっくり
休むようにと伝えよ。
ヴァレリア解放戦線戦士
「ハッ、かしこまりました。
カチュア
「そんなことが許されるとでも思うの?
炎のセリエ
「コリタニ城が陥落した今、我々には
この方法しか残されていない。
「公爵がガルガスタンを把握する前に
事を起こさねばならん。
「これが最後のチャンスかもしれないのだ。
カチュア
「…やはり、あなたたちはただの
テロリストなんだわ。
炎のセリエ
「残念ながら、おまえたちと話をしている
時間がなくなったようだ。
「あの娘は、現実を見ることができない。
理想は高くとも足が地面について
いなければ何の意味もない。
「空から下をみている鳥には、地べたを
這いずりまわるアリの気持ちなど
わかりはしない。
「手を汚すことができないあの娘には
真の革命を起こすことはできないのだ。
…おまえと同じようにな。